ライター、ワインエキスパート【冨永真奈美】

WINE & FOOD

樽熟成シャンパーニュの名家アルフレッド・グラシアンの夏の夕べ ディナーイベント(2023年8月26日、重慶飯店 麻布賓館)

アルフレッド・グラシアン

贅沢な中華のコース料理を食べたい。

猛烈に暑いせいか、この2カ月くらい、美味で滋養強壮に優れた中華料理への野心が絶えなかった。

その野心がもろに顔や態度や文章に出ていたのか、「樽熟成シャンパーニュの名家アルフレッド・グラシアンの夏の夕べ」へのご案内をいただいたので、いそいそ行ってきた。

四川料理の専門店「重慶飯店」による一夜限りの特別メニューと共に、アルフレッド・グラシアンの上質でユニークなシャンパーニュ5種を楽しめるというのだから。

仲の良い熟練ソムリエ含め、多くのシャンパーニュ愛好家から「シャンパーニュはどんな料理も受け止め、さらに料理の良さを引き出す」と聞いた。ある著名なワイン専門家の著書には「(シャンパーニュとは、どれほどこだわって美味しくできるかが問題であって)美味しくないシャンパーニュはない」とまで書かれている。

「そうかなあ、そうなんだろうなあ」と思っていたが、昨夜「やっぱりそうなんだ」と納得した。

7皿からなるコース料理のうち、特に前述の野心を大いに満たしてくれたのは、「大海老のチリソース煮」と、「鮑一尾を使用したオイスターソース煮」であろうか。白い大きな皿にあふれんばかりに盛られたこれらの珍味を、ブリュットロゼ(NV)とともに味わった。ブリュット(NV)、ブリュット・ブラン・ド・ブラン(2016)、ブリュット・ミレジメ(2012)のどれとも合うと思うが、私的にはブリュットロゼ(NV)との相性が好きだった。

1864年にエペルネに設立されたアルフレッド・グラシアンのシャンパーニュは、今もステンレス製タンクを使用せず樽発酵・樽熟成という伝統的な製法で造られている。そのような製法を今も続けているのは、アルフレッドグラシアンとクリュッグで、全体のたった1パーセントだとか。旨みのある高い酸味が実現した、口の中でパチパチ鳴るような刺激的かつやわらかで繊細なシャンパーニュをじっくり味わった。

たくさん食べて飲んだのに、二日酔いも胃もたれもなく、爽やかな翌朝を迎えた。

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