6年ほど前、フェルッチオ・ランボルギーニのストーリーを編集しているとき、ふと思った。エミリア・ロマーニャ州という美食とワインの地で生まれたフェルッチオ様は、きっとワインが好きだったはずだよなあと。
調べてみたら、やはりそうだった。1960年代の終盤から徐々に自動車業界を離れ、ワインづくりを始めていた。ウンブリア州とトスカーナ州の州境にあるなだらかな丘陵を購入し、ブドウの木を植え、ワインを造っていた。この土地を旅していたとき、ゆるやかな起伏のある美しい風景に魅せられ、即座に購入することを決意したのだという。
さすがはフェルッチオ・ランボルギーニ、スーパーカーづくりで体現した伝統と革新の融合をワインづくりでもやってのけていた。サンジョベーゼやグレケットなどの土着品種とともに、カベルネ・ソーヴィニヨンやメルロといった国際品種の栽培を断行し、土着品種とのブレンドを試みていた。当時としては、非常に稀有な試みだったという。
早速、フェルッチオ・ランボルギーニ生誕100周年記念ワインCentanni GrechettoとCentanni Rossoを飲み、それ以来定期的に購入している。
ワイン会では5種類のランボルギーニワインを楽しんだ。白はグレケット100%を1種類、赤はサンジョベーゼ、メルロー、カベルネ・ソーヴィニヨンのブレンドを3種類、サンジョベーゼ100%を1種類である。
サンジョベーゼ100%のEraは、日本で現在は一般販売されていないワインとのこと。「こんなワイン会をします」とランボルギーニワインのインポーターさんに相談したところ、「こちらもいかがですか」と勧めてくださった。芳醇な風味に「これが一番好き」という声も聞かれた。
スプマンテブランドのフェッラ―リは、スーパーカーブランドのフェッラ―リとは特に関連が無いようである。でも名前が同じだし、F1公式スパークリングワインに選ばれているブランドの美味なスプマンテだし、これまでもよく飲んできたし、エンツォ・フェッラ―リのきつい言葉にフェルッチオ・ランボルギーニが怒り触発され、ランボルギーニブランドが誕生したことだし、フェッラ―リの泡2種類を入れてみた。
ムッファート・デラ・サラは、名門アンティノリ家がウンブリア州に持つワイナリーで造られた甘口ワインである。こちらも大好評だった。
5皿からなるコース料理は、ウンブリア州の郷土料理にインスパイアされたもの。湖や丘を抜けていく爽やかな風やあたたかな太陽を思わせる料理は、ワインとの相性が抜群だった。
ランボルギーニの翻訳やコピーアダプテーションの仕事をしていると言うと、「車についてよく知ってるのですか?」と必ず聞かれる。
結論から言うと、エンジンやクラッチの構造を詳しく語ることはできない。
しかし私は、このブランドが提案するライフスタイルに魅了されている。ランボルギーニモデルとは、工芸、デザイン(工業製品)、純粋なアートの全領域に絶妙なバランスで属する傑作であるという事実にも。ランボルギーニの世界の素晴らしさは理屈を超えて分かるし、それを言葉で表現しようと努めてきた。
ランボルギーニの世界の浸りたいから、ランボルギーニワインはずっと飲むつもりである。