ライター、ワインエキスパート【冨永真奈美】

WINE & FOOD

時間、1カ月の休暇を取るいう決意表明、ペリエ ジュエ ベル エポック/PERRIER JOUET BELLE EPOQUE 2008

PERRIER JOUET BELLE EPOQUE 2008

*2021年10月に公開したエッセイです。

今日からでも冬の休暇に入りたい。

以下のご案内を顧客すべてに送りたい衝動に駆られている。
誠に勝手ながら、以下の期間を休業とさせていただきます。

■冬期休業期間
2021年10月23日(土)~2022年1月10日(月)
「人生に疲れた」とか「やる気が枯渇した」とかいうことではない。ありがたいことに本年度も業績は上々で目標額をすでに達成できた。休んでもバチはあたらないんじゃないかと思うだけなのである。

しかし何の対策も講じず、いきなり数カ月に及ぶ「冬期休業」案内を出したら、数か月後にどうなってるんだろ。どうなってるのか見てみたい気もするが、おそろしくて実行する気はまったくない。

私は「昔は良かった」とは全然思わない人である。あんな苦労した日々(特に20代と30代)なんぞに絶対戻りたいわけがない。それらの日々がベースとなって手に入れた今が一番なのだ。これからもっと良い日々にしていくだろうしね。

しかし過去の日々が「ちょっと恋しいなあ」と思う要因がたったひとつだけある。それは自分のことだけを考えて行動する「時間」があったことである。

その他の要素にはかなり不足していたが、自分のことだけにかまける「時間」はあった。例えば1カ月間、バックパック旅行しようと思えばまあできた。今はその逆。その他の要素はかなり充実してきたが、自分のためだけの「時間」の確保に四苦八苦している。

社会の中で自分の属する位置や生活スタイルが定まるにつれ、相応の義務や責任が発生してくる。その義務や責任を果たそうとしていると、自分のためだけの時間がいつのまにか削られてくる。さらには自分には関係のない義務や責任まで自分の領域をむしばんでくることもある。それらを「自分がやらないと迷惑がかかる」、「みんながやるからやったほうがいい」と請け負っているうちに、いつのまにか、自分の時間ではなくまるで他人の時間を生きているかのようになってくる。

すごくもったいない。この世で唯一、すべての人間に平等に与えられた最高の資産そして可能性。
それは「時間」なのに。

なものでこの数年は「すること」ではなくて「しないこと」を決め、しないと決めたことは絶対にしないようにしている。かなり整理はついたが、まだまだ十分ではない。

私は自分だけの時間を確保したい。だから来年から毎年1カ月の休みを取ろうと思う。

そう思いつつ無策のままで来年の今日を迎えることが無いよう、PERRIER JOUET BELLE EPOQUE 2008を飲みつつ「休むんだ!」と決意した。2008年は近年最高のヴィンテージと名高いとのこと。私はワインを飲むと何でもいいから書きたくなるのだが、「近年最高」などのコピーを聞くとさらにもっといろいろ何でも書きたくなるのだ。決意表明までしちゃったりしてね。

欧米はともかく、日本で1カ月間不在にすると、死んだか入院したか倒産したと勘違いされる確率が高い。そう思われないように少しずつ策を練らないと。今の業務形態だと、人をさらに増やすしかないんでしょうかね。
追伸:といいつつ、今年も結局は年末進行に巻き込まれ、年末年始の取材も受けてしまうんだろうなと思う。でも1カ月休めたらそんなの平気で受けて立つ、ですよね。

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