ライター、ワインエキスパート【冨永真奈美】

CULTURE & ENTERTAINMENT

パルミジャーノ・レッジャーノ・チーズ協会が「FOODEX JAPAN 2024」に出展ー 40kgものチーズを「割る」パフォーマンスでビジターを魅了ー

パルミジャーノレッジャーノのカッティングショー

「FOODEX JAPAN 2024」(2024年3月5日(火)~8日(金)、東京ビッグサイト)に、今年もパルミジャーノ・レッジャーノ・チーズ協会が出展し、4年ぶりに来日した協会のシモーネ・フィカレッリ氏がホールチーズのカッティングショーを行った。

パルミジャーノ・レッジャーノのカッティングとは、切るのではなく割ることを意味する。

フィカレッリ氏の手さばきは実に鮮やかだ。26ヶ月の熟成を経た大太鼓のようなホールチーズを立てて、くるくると転がしながら側面の中心に線を入れる。その線に沿って、短剣ナイフとアーモンドナイフを順に差し込むと亀裂が発生する。カッティングの際に重要なのは温度とのこと。冷蔵庫から出したままの冷たい状態ではなく、常温程度に下げた状態でなければうまく亀裂が入らないのだ。

40kgものチーズが見事に割れ、集まった観客の間から「わあ」という歓声が上がった。目の前にある巨大なチーズの塊は、40キロもの重さだ。割られた断面は無秩序から生まれた秩序ともいうべきユニークな形状で、非常に濃厚な香りが漂ってくる。

早速大きめにカットされたチーズを試食した。40キロのチーズを作るためには、520リットルの牛乳が必要となる。牛乳がたっぷりと使われたコクのあるチーズには、ナッツやドライフルーツのニュアンスも感じられ余韻が非常に長い。タンパク質由来の白い粒によってさらに旨みが引き立てられている。

フィカレッリ氏は「パルミジャーノ・レッジャーノは完全に自然なチーズですよ」と微笑む。

パルミジャーノ・レッジャーノは約1000年もの歴史を持つチーズだ。約1000年の間、材料は生乳と塩、天然の凝乳酵素だけで、前日に搾った牛乳から脂肪分を除去し、翌朝に搾った牛乳と混ぜるという作り方も変わっていない。生産地は北イタリアのパルマの他、レッジョ・ エミリア、モデナの各県全域とボローニャ県の一部(レノ川左岸)という限られた地域のみとなる。なぜなら材料となる生乳には、この土壌で育まれた微生物の働きが必須となるからだ。熟成期間は少なくとも12ヶ月で、一般的には24ヵ月から36ヵ月間、場合によっては40ヶ月超もの長期にわたり熟成を行うこともある。こうした厳格な基準を満たし、パルミジャーノ・レッジャーノ・チーズ協会が認定したチーズのみ「パルミジャーノ・レッジャーノ」という名称を名乗れるのである。

材料の調達から、製造、保存にいたるまで、すべてが完璧でなければならない。こうした厳格な基準を継承していくには、多大な労力が必要とされるのではないだろうか。

「ええ、確かに。でも、パルミジャーノ・レッジャーノの歴史と伝統を受け継ぎ、チーズ作りに携わることは非常に名誉なことなのです」とクリスティーナ・モロニ氏(パルミジャーノ・レッジャーノのメーカー「Caseificio GENNARI」のエクスポート・マネージャー)は胸を張る。

モロニ氏はこうも強調する。

「時代の移り変わりによる影響はありながらも、伝統的な作り方を維持していくよう万全を期してます。生乳と塩、天然の凝乳酵素以外に、私たち作り手が加える材料は『情熱と時間』です。情熱を注いで作ったチーズを、時間をかけて熟成させていく。『情熱と時間』はとても重要な材料なのですよ」。

パルミジャーノ・レッジャーノをパルミジャーノ・レッジャーノたらしめているのは、何よりも生産者の方々の熱い情熱なのかもしれない。

パルミジャーノ・レッジャーノは「イタリアチーズの王様」とも呼ばれる最高品質のハードチーズである。その生産者の方々と言葉を交わしながら、割られたばかりのチーズを試食するという素晴らしい機会となった。

パルミジャーノ・レッジャーノ・チーズ協会とは:
1934年に設立。パルミジャーノ・レッジャーノの全生産者が所属している非営利団体である。チーズの品質審査および本物の証としての押印を行い、世界中に広く出回る模倣品から本物を守り、正しい知識 や認知度、そして消費量を向上させるための活動も行っている。
https://www.parmigianoreggiano.com/

Foodex 2024

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