6月初旬のこと。数日続けてギリシャのイベントに参加した。招待してくださったのは、ギリシャ産輸入食品・ワイン ノスティミアさんである。3月のフーデックスでブースがお隣同士だったので、そのよしみでいろいろ楽しいご案内をいただいている。
その一つは、四ツ谷にあるフレンチビストロ「a la Boutille」で開催されたFoundi Estate(フンディ・エステート)のメーカーズ・ディナーである。フンディ・エステートが位置する北ギリシャのナウサは、クシノマブロの名産地だ。醸造家のジョージア・フンディ氏の説明を聞きながら、その名産地からやってきたクシノマブロのワインとフレンチのペアリングを楽しむ会である。
トゥリギアス フンディ2021はクシノマブロで造られた白ワイン。ブランドノワールである。ナウサでもクシノマヴロ100%の白ワインは非常に珍しいとのこと。さわやかな風味のなかにとろりとした舌触りがあって、果物をぎゅうと口の中に直接絞り入れたような濃厚な酸味が広がる。すごく個性的なワインだ。
アルガティア ホリス クシノマヴロ ロゼ2021は、さくらんぼの香りがするロゼワインである。フレッシュで、微発砲で、風味も色も日本のさくらんぼを思わせる。ラベルのデザインもすごく素敵。少なくとも私にとって、これまで飲んだことの無い、ありそうでなかった、会えそうで会えなかったタイプのロゼワインだ。このワインは、フンディ・エステートの親戚にあたるアルガティア・ワイナリーで造られている。ジョージアさんのお父さんが、このロゼワインの造り手のゴッドファーザーなんだそうな。こうしたつながりもギリシャでは親戚と呼ぶのだという。「みんな家族、みんな親戚」といったギリシャの家族観も伝わってくる。
赤ワインは、ナウセア フンディ2017、クティマ フンディ2008の2種類。熟したイチゴ、プルーン、トマト、ドライハーブ、オリーブ、土の香り・・・・・・いろんな香りがあり、香りが取るのが楽しくなる。2008のワインにはトリュフのニュアンスも感じられる。
この4本は、こちらからがんばって香りを取りに行かなくても、ワインの方から積極的に香りをふりまいてくれたように思う。そして前菜からメインまで、ペアリングされたどの皿からもワインと同じ風味がした。個性的で美味なペアリングだった。
この4本はまた、プレゼントとして家族やとても仲の良い友人に贈りたくなるワインだった。誰かの顔を思い浮かべながら、「このワインを贈って喜ぶ顔を見たい」と思わせてくれるワインは良いワインだと思う。
トゥリギアス フンディ2021は家族のために買う。それから、いつも大抵、泡と白ばかり飲んでいるソムリエの友人にも贈りたい。
ナウセア フンディ2017とクティマ フンディ2008は、「もうこれまで長い間いろんな赤ワインをたくさん飲んできた。けど、さらにいろんな美味しい赤ワインを探している」という赤ワイン好きの友人に贈りたい。
アルガティア ホリス クシノマヴロ ロゼ2021は、家族と、前述の大抵泡と白ばかり飲んでいるソムリエの友人と、ワインは好きだがまだ飲み始めたばかりだという友人に贈りたい。ロゼワインはそもそも、ワインの初心者からベテランまで幅広い人々に好まれる、どんな食事にも合う万能ワインとされている。万能性だけでなく、このアルガティア ホリス クシノマヴロ ロゼは、もうこれまでそれこそ何でも飲んできた人にも「わ~これいいね」と感じさせる、なんというかユニークな魅力があると思う。
このアルガティア ホリス クシノマヴロ ロゼ2021は、ノスティミアの創業者ご夫妻の娘さん、万梨奈さんが選んだワインだという。「ご両親が選ぶクラシックで伝統的な美味しさのワインと違う魅力があるね」と、a la Boutilleのシェフも私も他の参加者さんもワクワクしていた。「家業を継ぐかどうか、遅かれ早かれ決めるときが来るの」とジョージアさんは言う。万梨奈さんにも「そのとき」があったのだろう。新たな世代が今後選んでいくであろう、新たな優れたセレクションへの期待も高まったディナーとなった。
大事な追伸:
Association of Imathia’s Agricultural Cooperatives(イマティア農業協同組合)によるプレスイベント「Delicious Fruits」(ノスティミア共催、八芳園)では、ギリシャのリンゴとキウイについて話を聞いた。ギリシャのリンゴとキウイ。地中海地域の多様な微気候の影響を受けて育った果物なんて、いかにも美味しそうですよね。日本に入ってこないかな。